WiMAX を提供する UQ コミュニケーションズが、新たな 2.5GHz 帯の電波を獲得した。
限りある資源である電波帯域は国からの割り当てによって事業者に配分されており、新しい 2.5GHz 帯の割り当てには、KDDI 系の UQ とソフトバンク系の WCP が獲得に名乗りを上げていた。7 つの基準による電波監理審議会・総務省の審査の結果、3 対 1 で UQ が勝ち、7 月 26 日、UQ への電波割り当てが認定された。
認可を受けて UQ は、下り 110Mbps の WiMAX 2+ を 2013 年 10 月末にサービスインするとしている。
競争に負けたソフトバンクは怒り心頭で大暴れの様相を呈しているが、UQ 勝利は前評判通りで、携帯三社への電波割り当て状況を鑑みても妥当なところと言えるだろう。
ここで、WiMAX のこれまでの動きを振り返ってみよう。
下り 40Mbps、上り 15.4Mbps(以前は 10Mbps)の高速無線通信サービス「UQ WiMAX」は、2009 年 7 月に正式サービスを開始。2013 年 2 月に契約数が 400 万を突破するなど、ゼロからスタートした新参サービスとしてはかなり急速に普及してきている。
利用可能エリアは、サービス開始当初は首都圏・京阪神・名古屋地区のみだったが、2012 年 6 月には主要都市で 99% を超え、全国平均でも 90% となっている。
顧客満足度も高く、価格.com のプロバイダ満足度ランキング 2012 において 1 位、MMD 研究所の調査でも 1 位となっているなど、各種調査で好評価を獲得している。
WiMAX の特徴の 1 つとして、オープンなビジネスモデルを採用していることが挙げられる。携帯電話の場合、回線や端末をキャリア(サービス提供会社)が統制しているので、docomo から KDDI に乗り換えると端末は使えなくなってしまう。
WiMAX の場合は、本家 UQ の他に、MVNO と呼ばれるサービス提供会社が多数あるが、利用者はどの会社と回線契約を結んでも良い。回線契約を乗り換えても端末は使い回せる(一部の MVNO は自社専用端末を提供しているので注意)ので自由度が高い。また、端末も、WiMAX 機能を内蔵したパソコン(WiMAX PC/すぐネットパソコン)の他に、ルータータイプ(WiMAX Speed Wi-Fi)、USB タイプなどさまざまなものが、さまざまな会社から発売されており、どれでも好きなものを使える。
実際俺も、WiMAX プロバイダをワイヤレスゲート(ヨドバシ)→BIGLOBE→@Nifty と変えているし、端末も Let's note J10、WM3600R、URoad-Aero を使っているが、どれも問題なく使えている。
WiMAX の競合サービスとしては、携帯各社が提供する LTE がある。LTE の詳細は各社によって少しずつ異なるが、WiMAX と LTE の特徴を比較すると、
となる。いろんな意味で自由度の高い WiMAX であるが、LTE と比べると速度が遅いのが欠点だった。
そんな中での WiMAX 2+ である。ここからは WiMAX 2+ について見ていこう。
通信速度の問題については UQ も早くから取り組んでおり、2011 年 7 月には WiMAX 2 のフィールドテストを公開。カタログスペック 165Mbps の WiMAX 2 において、実効速度で 150Mbps という驚異の記録を達成した。
しかし、WiMAX 2 には大きな問題があった。世界的な流れとして WiMAX ではなく LTE がブーム。世界規模で見ると WiMAX から撤退する事業者が増えており、WiMAX がガラパゴス化する危険があった。
そこで WiMAX 陣営が編み出した苦肉の策が WiMAX Release 2.1 規格。初代 WiMAX および WiMAX 2 に加えて、LTE(TD-LTE)を包含する。WiMAX の名を冠してはいるが、事実上の LTE 化と言えるだろう。これにより LTE の潮流に乗ることができるようになり、端末や基地局設備などを安価に調達できる見込みがたった。
今回 UQ が発表した WiMAX 2+ も、WiMAX Release 2.1 規格をベースにしている。WiMAX 2+ の「プラス」の部分に、LTE 互換という意味を込めているのだろう。
WiMAX 2+ は最初に述べたように下り 110Mbps の速度となる(上りはまだ公表されていない)。docomo 以外の 3 社の LTE の速度を追い越し、docomo と肩を並べるトップクラスの速度だ。単に速度が向上するだけではなく、新幹線などの高速移動にも対応する。これまでの WiMAX も新幹線の中で通信できたものの、実効速度が数百 kbps 程度とかなり遅かったが(繋がるだけでもすごいのだが)、これが改善されるだろう。プレスリリースでは明言されていないが、遅延(レイテンシ)も改善されると思われる。
WiMAX 2+ は初代 WiMAX を包含するので、これまでの WiMAX も問題なく使える。もちろん速度は最大 40Mbps のままだが、初代 WiMAX ユーザーが WiMAX 2+ に移行していくにつれて電波利用効率が高まるので、初代 WiMAX も実効速度が上がるかもしれない。
ただし、WiMAX 2+ になっても、屋内(建物内)の繋がりにくさは改善されない。WiMAX/WiMAX 2+ が使用している 2.5GHz 帯の電波は反射しやすいため、壁に当たると跳ね返ってしまって屋内に届きにくい。一方、LTE の携帯各社はプラチナバンドと呼ばれる 800MHz 帯の電波を保有しており、屋内にも電波が届く。この点については、親会社の KDDI の電波を使わせてもらうなどの抜本的な対策をしない限り、現状のままとなる。
WiMAX 2+ は、7 月末の電波認定からわずか 3 ヶ月でサービス開始となる。これまでの UQ の準備が着実に行われていた証といえよう。端末や料金などの詳細はまだ発表されていないので、早めの発表を期待したい。TD-LTE 互換であることから、次期 iPhone で WiMAX 2+ が使えるかもしれないという噂をちらほら見かけるが、単に規格上の互換性だけで実際に使用可能になるのかはまだ分からない。
110Mbps でのスタートとなる WiMAX 2+ だが、2017 年には下り 1Gbps オーバーを狙っていく構想のようだ。将来的にサービスを高度化していくためにも、まずは足元のサービス固めが重要になるだろう。
※本記事の写真は、リンク先からの引用です。
限りある資源である電波帯域は国からの割り当てによって事業者に配分されており、新しい 2.5GHz 帯の割り当てには、KDDI 系の UQ とソフトバンク系の WCP が獲得に名乗りを上げていた。7 つの基準による電波監理審議会・総務省の審査の結果、3 対 1 で UQ が勝ち、7 月 26 日、UQ への電波割り当てが認定された。
認可を受けて UQ は、下り 110Mbps の WiMAX 2+ を 2013 年 10 月末にサービスインするとしている。
競争に負けたソフトバンクは怒り心頭で大暴れの様相を呈しているが、UQ 勝利は前評判通りで、携帯三社への電波割り当て状況を鑑みても妥当なところと言えるだろう。
ここで、WiMAX のこれまでの動きを振り返ってみよう。
下り 40Mbps、上り 15.4Mbps(以前は 10Mbps)の高速無線通信サービス「UQ WiMAX」は、2009 年 7 月に正式サービスを開始。2013 年 2 月に契約数が 400 万を突破するなど、ゼロからスタートした新参サービスとしてはかなり急速に普及してきている。
利用可能エリアは、サービス開始当初は首都圏・京阪神・名古屋地区のみだったが、2012 年 6 月には主要都市で 99% を超え、全国平均でも 90% となっている。
顧客満足度も高く、価格.com のプロバイダ満足度ランキング 2012 において 1 位、MMD 研究所の調査でも 1 位となっているなど、各種調査で好評価を獲得している。
WiMAX の特徴の 1 つとして、オープンなビジネスモデルを採用していることが挙げられる。携帯電話の場合、回線や端末をキャリア(サービス提供会社)が統制しているので、docomo から KDDI に乗り換えると端末は使えなくなってしまう。
WiMAX の場合は、本家 UQ の他に、MVNO と呼ばれるサービス提供会社が多数あるが、利用者はどの会社と回線契約を結んでも良い。回線契約を乗り換えても端末は使い回せる(一部の MVNO は自社専用端末を提供しているので注意)ので自由度が高い。また、端末も、WiMAX 機能を内蔵したパソコン(WiMAX PC/すぐネットパソコン)の他に、ルータータイプ(WiMAX Speed Wi-Fi)、USB タイプなどさまざまなものが、さまざまな会社から発売されており、どれでも好きなものを使える。
実際俺も、WiMAX プロバイダをワイヤレスゲート(ヨドバシ)→BIGLOBE→@Nifty と変えているし、端末も Let's note J10、WM3600R、URoad-Aero を使っているが、どれも問題なく使えている。
WiMAX の競合サービスとしては、携帯各社が提供する LTE がある。LTE の詳細は各社によって少しずつ異なるが、WiMAX と LTE の特徴を比較すると、
WiMAX | 比較項目 | LTE |
---|---|---|
△ 下り 40Mbps、上り 15.4Mbps | 通信速度 | △~○ 下り 37.5~112.5Mbps、上り 12.5~25 Mbps(docomo) 下り 75Mbps、上り 25Mbps(KDDI) 下り 76Mbps、上り 10Mbps(ソフトバンク) 下り 37.5~75Mbps、上り 12.5~25Mbps(EMOBILE) |
× 100ms 程度 | 遅延 | ○ 数十 ms 程度 |
× つながりにくい | 屋内利用 | ○ つながりやすい |
○ 無し | 通信制限 | × 有り(一定以上の通信で激遅になる) |
○ 月額 3,880 円 | 利用料金 | × 6,000~7,000 円程度(一般的なスマホの場合) |
○ 2012/11 - 94% | エリア(人口カバー率) | ×~○ 2013/03 - 75%(docomo) 2013/05 - 1~97%(KDDI) 2013/06 - 1~92%(ソフトバンク) 2013/02 - 94%(EMOBILE) |
○ 自由 | 乗り換え | × 制限有り(MNP で乗り換えても原則として端末は使い回せない) |
となる。いろんな意味で自由度の高い WiMAX であるが、LTE と比べると速度が遅いのが欠点だった。
そんな中での WiMAX 2+ である。ここからは WiMAX 2+ について見ていこう。
通信速度の問題については UQ も早くから取り組んでおり、2011 年 7 月には WiMAX 2 のフィールドテストを公開。カタログスペック 165Mbps の WiMAX 2 において、実効速度で 150Mbps という驚異の記録を達成した。
しかし、WiMAX 2 には大きな問題があった。世界的な流れとして WiMAX ではなく LTE がブーム。世界規模で見ると WiMAX から撤退する事業者が増えており、WiMAX がガラパゴス化する危険があった。
そこで WiMAX 陣営が編み出した苦肉の策が WiMAX Release 2.1 規格。初代 WiMAX および WiMAX 2 に加えて、LTE(TD-LTE)を包含する。WiMAX の名を冠してはいるが、事実上の LTE 化と言えるだろう。これにより LTE の潮流に乗ることができるようになり、端末や基地局設備などを安価に調達できる見込みがたった。
今回 UQ が発表した WiMAX 2+ も、WiMAX Release 2.1 規格をベースにしている。WiMAX 2+ の「プラス」の部分に、LTE 互換という意味を込めているのだろう。
WiMAX 2+ は最初に述べたように下り 110Mbps の速度となる(上りはまだ公表されていない)。docomo 以外の 3 社の LTE の速度を追い越し、docomo と肩を並べるトップクラスの速度だ。単に速度が向上するだけではなく、新幹線などの高速移動にも対応する。これまでの WiMAX も新幹線の中で通信できたものの、実効速度が数百 kbps 程度とかなり遅かったが(繋がるだけでもすごいのだが)、これが改善されるだろう。プレスリリースでは明言されていないが、遅延(レイテンシ)も改善されると思われる。
WiMAX 2+ は初代 WiMAX を包含するので、これまでの WiMAX も問題なく使える。もちろん速度は最大 40Mbps のままだが、初代 WiMAX ユーザーが WiMAX 2+ に移行していくにつれて電波利用効率が高まるので、初代 WiMAX も実効速度が上がるかもしれない。
ただし、WiMAX 2+ になっても、屋内(建物内)の繋がりにくさは改善されない。WiMAX/WiMAX 2+ が使用している 2.5GHz 帯の電波は反射しやすいため、壁に当たると跳ね返ってしまって屋内に届きにくい。一方、LTE の携帯各社はプラチナバンドと呼ばれる 800MHz 帯の電波を保有しており、屋内にも電波が届く。この点については、親会社の KDDI の電波を使わせてもらうなどの抜本的な対策をしない限り、現状のままとなる。
WiMAX 2+ は、7 月末の電波認定からわずか 3 ヶ月でサービス開始となる。これまでの UQ の準備が着実に行われていた証といえよう。端末や料金などの詳細はまだ発表されていないので、早めの発表を期待したい。TD-LTE 互換であることから、次期 iPhone で WiMAX 2+ が使えるかもしれないという噂をちらほら見かけるが、単に規格上の互換性だけで実際に使用可能になるのかはまだ分からない。
110Mbps でのスタートとなる WiMAX 2+ だが、2017 年には下り 1Gbps オーバーを狙っていく構想のようだ。将来的にサービスを高度化していくためにも、まずは足元のサービス固めが重要になるだろう。
※本記事の写真は、リンク先からの引用です。