ロジクールのワイヤレスヘッドセット H800 を買ったのを機に、オーディオデータをワイヤレスで飛ばす際の規格について調べてみた。ちなみに、H800 は、Bluetooth と独自 USB の 2 つを切り替えてパソコンと接続できる。

ワイヤレスオーディオで標準的なのは H800 もサポートしている Bluetooth。H800 は Bluetooth の詳細が不明だが、一般的には、Bluetooth Ver 2.x+EDR / A2DP で通信するのが多いのではないか。

Bluetooh で通信する際の欠点は、音質が悪くなることと、遅延が発生すること。Bluetooth で音声をやりとりするためのプロファイルである A2DP (Advanced Audio Distribution Profile) には、無圧縮で音声を伝達する方法が定められていない。最高でも AAC 圧縮の音質に下がってしまう。また、一般的に 0.2 秒程度の遅延が発生するとのことで、普通に音楽を聴く分には問題ないものの、ゲーム用途では使えない。

音声を圧縮するのは、単純に速度が足りないからと思われる。無圧縮の音声データは一般的に 1411.2Kbps。一方で、Bluetooth Ver 2.x+EDR の最高速は、下り速度に特化した場合でも 2178.1Kbps。無線の場合、電波状況が良好でも理論値通りの速度は出ないし、ましてや電波が不安定だったりすると、とても 1411.2Kbps の通信はできないだろう。

Bluetooth も Ver 3.x+HS になれば 24Mbps の速度となり、無圧縮の音声データを送るのに十分な速度となる。しかし、A2DP プロファイルが無圧縮をサポートしない現状では速度だけ上がってもダメだし、また、Ver 3 は Windows 7 の標準サポート外という問題もある。Bluetooth で無圧縮をサポートする計画があるのか分からないが、仮に計画があったとしても道のりは長そうだ。

では USB はどうか。

USB には USB オーディオという規格があり、有線 USB では普及している。USB 2.0 は 480Mbps と高速で、無圧縮で音声データを送ることができ、遅延も問題にならない。

USB の場合の問題は無線。Wireless USB という標準規格があり、有線 USB をすべて無線に置き換えることができるのだが、残念ながら普及していない。パソコン側にも Wireless USB は搭載されていないし、ヘッドフォン・ヘッドセットも Wireless USB 対応というのは見たことが無い。

というわけで結局、ロジクールのように USB ポートを用いた独自無線通信をすることになってしまうのだろう。

標準規格の方が何かと便利なので、Wireless USB には普及してもらいたいところだが……。