WPF(Win32)等の非 UWP アプリを Microsoft Store(旧 Windows Store)で配布する場合、自前のウェブサイトでの配布と比べてどんなメリット・デメリットがあるのか。

ユーザー(利用者)側の視点と、開発者側の視点、それぞれで挙げてみました。WPF アプリを Microsoft Store に申請・登録する一環としての整理です。


ユーザーにとってのメリット

インストールが簡単

Nyuusyuストア配布の場合、ユーザーは「入手」ボタンを押すだけでアプリをインストールできるため、とても簡単です。スタートメニューにも自動的に登録されます。

自前配布の場合でもインストーラーの出来が良ければワンクリックでインストールできますが、中にはステップが多かったり、余計なアプリも一緒に入れさせようとするインストーラーもあります。

zip 配布の場合、解凍するだけで良いのであれば操作は簡単ですが、スタートメニューには自動登録されません。また、解凍先を Program Files にしてしまうと Virtual Store が悪さをする恐れもあります。同梱されている exe ファイル数が多い場合など、どれを実行すれば良いのか迷うこともあります。

SmartScreen による妨害がない

ストア配布のアプリは、起動すると問題なく起動できます。

自前配布のアプリは、初回起動時に SmartScreen によって起動がブロックされ、いくつか画面をクリックしないと起動できないことがあります。

更新が簡単

ストア配布の場合、アプリの新バージョンが公開されると自動的に更新されるため、ユーザーは特に操作は必要ありません。自動更新まで多少のタイムラグはあり、それが嫌な場合は手動で更新することになりますが、それでも更新ボタンを押す程度です。

自前配布の場合、自動更新機能がないアプリも多いので、更新版があるかを自分で確認し、更新版があれば再度インストールする形になります。


アンインストールが簡単

Uninstallストア配布の場合、「アプリと機能」からワンクリックでアンインストールできます。

自前配布の場合、アンインストール機能がないアプリも多いので、手動でのアンインストールを余儀なくされます。

PC 買い換え時に楽

PC 買い換え時や Windows のクリーンインストール時など、ストアから過去にダウンロードしたアプリを、まとめて新しいデバイスにインストールできます。

なお、本節の主な内容を抜き出し、ユーザー向けに別ページに整理しています

ユーザーにとってのデメリット

知らないアプリを探しづらい

ストアでアプリを探す際、キーワード検索しかできないため、アプリを事前に知っていないと入手は困難です。

アプリのカテゴリー分けはされているのですが、ストアアプリで探すときはカテゴリーから探せません。ストアの Web 版はカテゴリーによる絞り込みができますが、他の条件との複合絞り込みになってしまうなど、使い勝手がイマイチです。

ストアアプリでもカテゴリー表示ができるようになったり、あるいはユーザーが付与するタグによる類似アプリ検索ができるようにするなど、知らないアプリと出会える仕組みがあると良いのですが。

アプリの新旧が分からない

ストアで表示されるリリース日は、アプリが初めて登録された日のようです。アプリが更新されてもリリース日は更新されないため、現在も開発が続いているアプリなのか、古いアプリなのかが分かりません。

Microsoft アカウントが必要

ストアアプリをインストールするには、Microsoft アカウントが必要です。

とはいえ、多くの Windows ユーザーは Windows インストール時に Microsoft アカウントを作成しているはずなので、これは大したデメリットではありません。

開発者にとってのメリット

配信基盤整備が不要

開発者はアプリ自体を開発すればよく、インストーラー・アンインストーラーの開発、配信や自動更新の仕組みの用意は不要です。

無料・有料アプリ両対応

ストアでは、無料アプリも有料アプリも配信できます。

無料アプリ配信時の手数料は無料です。

有料アプリ配信時の手数料は標準で 15% のようです。キャンペーン価格の設定など柔軟な設定が可能なようです。

使用状況の把握

Shiyou配布しているアプリがどのくらい取得されたか、どのくらい使用されているかをグラフで閲覧することができます。tsv 形式でダウンロードすることもできます。

取得はまだしも、使用については自前で把握しようとするのはかなり労力がかかりますので、ストアならではのメリットと言えるのではないでしょうか。

不正コピーの低減

ストア配布のアプリは不正コピーが困難になると Microsoft は主張しています。

とはいえ私が自分で配布しているストアアプリを、ストアを経由せずにコピーしてみたら普通にコピーできました。無料アプリだったので特に制限がかからなかったのか、それ以外の要因があるのかは不明です。

開発者にとってのデメリット

配布に手間がかかる

アプリ開発時、ストアの審査に合格するように開発する必要があり、自前配布よりも手間がかかります。

アプリ本体の開発後も、MSIX パッケージの作成、ストアへの各種情報入力など、新規配布や更新の度に手間がかかります。審査に不合格になると修正の手間も発生します。

配布までのタイムラグがある

ストア審査の分、配布までに時間がかかります。審査は最短でも 1 時間弱、長いときは丸 7 日近くかかったこともありました。審査に不合格になって修正となれば、さらに時間がかかります。

配布できないリスクがある

ストア審査に合格できなければストア配布できません。

今まで配布できていたアプリが Microsoft の胸ひとつで配布できなくなってしまうリスクもはらんでいます。

自前サイトは無くせない

ストアでのアプリ配布ページから、アプリ紹介ページやプライバシーポリシーへのリンクが必須です。このため自前サイトを維持し、これらの情報を掲載する必要があります。

ストアアプリが保持できない機能がある

UWP ほどの制限ではありませんが、管理者権限への昇格が必要なアプリはストアで受け入れられないという記述があるなど、一部の機能があるとストアでの配布ができないようです。

とはいえ、Visual Studio など、インストール時に管理者権限が必要なアプリも登録されていたりするのが謎です。

しょぼいアプリだと思われるリスクがある

これまでストア配布のアプリは UWP アプリだったため、機能にかなり制限があり、しょぼいアプリがほとんどでした。

Desktop Bridge により非 UWP なフル機能のアプリを登録できるようになりましたが、ユーザーからは UWP なのかフル機能アプリなのか見分けはつきません。

ストア配布のアプリはしょぼいというイメージは根強いと思われ、フル機能のアプリを配布しても先入観でしょぼいと思われてしまうリスクがあります。

古いアプリだと思われてしまう

前述のように、リリース日として表示される日付が登録日のため、更新版をリリースしてもリリース日が更新されず、古いアプリだと思われてしまいます。

開発者登録費用がかかる

ストア配布するには、開発者(パートナー)としての登録が必要で、その際に 2,000 円程度の費用がかかります。

とはいえ、一発ものの費用で、維持費はかからないので、これは大したデメリットではありません。

ストア配布事例

個人(っぽい人)でストア配布しているアプリを探してみました。非 UWP っぽいと思われるものと中心にしていますが、見分けは付かないため、UWP が混じっているかもしれません。

他にも事例がありましたら是非教えてください。

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参考資料