MVVM
同等の機能を持つソフトでフレームワークが異なる場合、Visual Studio 2017 で計算できるコードメトリックスはどのくらい変わるのか、というのが気になったので、あまり意味はないけど測定してみた。

対象プロジェクトはゆかりすたー。バージョン間で細かな違いはもちろんあるものの、大まかに見れば機能的にはほとんど同等。結果は以下の通り。

フォーム
ゆかりすたー
Ver 7.51
WPF / コードビハインド
ゆかりすたー METEOR
Ver 1.50
WPF / MVVM
ゆかりすたー METEOR
Ver 2.02
保守容易性指数828486
サイクロマティック複雑度388839334480
継承の深さ799
クラス結合431466465
コード行1249896859333

保守容易性指数

公式解説によれば保守容易性指数の値が大きいほど保守性が高く、0~9 がダメ、10~19 がまぁまぁ、20~100 が OK とのこと。

いずれのフレームワークでも 80 以上なのでかなり良好と言えると思うが、WPF のほうが少し高い数値になっている。

ただ気になるのは、WPF の XAML 部分はあまり考慮されていないのではないかということ。WPF / MVVM で試しにメインウィンドウの XAML からコントロールをさくっと削り、メインウィンドウ部分の評価を比較したのが以下。

元の WPF / MVVMコントロール削除
保守容易性指数91
91
サイクロマティック複雑度11
継承の深さ99
クラス結合72
コード行22

保守容易性指数(というかクラス結合以外)に変化がない。XAML に複雑な表示ロジックをべた書きして、代わりに ViewModel からコードを減らしたら、保守容易性指数はあがってしまうのではないか。ちょっとインチキ臭い。XAML を考慮に入れると、フォームと WPF で保守容易性はほとんど変わらないと言えるかもしれない。

さて、総合的には保守容易性指数が 86 の WPF / MVVM でも、細かく見ていくと値が低い部分もある。最低は 0 で、ViewTFoundsWindowViewModel.cs の DataGridListSorting()。ソート基準項目によってひたすら switch するので低い評価になっている。

次に低いのが CsvOutputWriter.cs の Output() で 28。こちらも出力項目ごとに switch していて、switch の case が並ぶのは低い評価になりやすいのかもしれない。

サイクロマティック複雑度

Wikipedia を読むと、サイクロマティック複雑度(循環的複雑度)はプログラム実行時の経路数に関係する値で、大きいほど経路・分岐が多くなる。プログラムの動作を理解するのが大変になったり、テストケースが多くなって大変になったりするのだろう。

プログラムの規模が大きくなるにつれてサイクロマティック複雑度も大きくなっていく性質があるので、単純に数値だけを見て良い悪いは言えないが、相対的に WPF よりフォームの方が値が小さいので、フォームの方が理解しやすいという見方ができるのではないか。体感としても、フォームの方が簡単だと思う。

継承の深さ

使用しているクラスが、根源となるクラスである Object から何段階派生しているか。WPF のほうがクラス階層が深いが、最大の 9 となっているクラスはすべてウィンドウだった。WPF でウィンドウを使うと必ず 9 以上になるということからすれば、結果が 9 であるというのは少ない値と言えるだろう。

クラス結合

低い方が良い数値。フォームの方が低い。

コード行

ソースコードの行数ではなく、IL の数。ソースコードのコメント行や空行は数値に影響しないと思われるため、単純にソースコードの行数を数えるよりも実際的。

ソースコード行数より少ない数値となる傾向があり、例えば 最大値を記録した SyncClient はソースコード上は 2058 行だが、IL では 882 行と、半分以下になっている。

フレームワーク間で比較すると、WPF のほうがずっと少なくなっている。フレームワークに関係ないところで最適化してるところが(ソースコード行数ベースで)1000 行ほどあるが、それを差し引いても WPF のほうが少ない。

ただし、WPF は使用しているライブラリが多く、それらまで含めると、総合的なコード量はフォームのほうが少なくなるのではないだろうか。

まとめ

元々あまり意味のある比較とは思えないものの、傾向としては、フォームの方がシンプル・コンパクトということになるだろう。元々 WPF / MVVM はシンプルさで売ってないし……。