便利なマルチトラック動画(複数の音声トラックを持つ動画)の作り方についてまとめました。

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目次

マルチトラックのメリット

ニコカラ(カラオケ字幕動画)を例にすると、同じ曲でも「オンボーカル(オンボ):元の音声付き楽曲」「オフボーカル(オフボ):カラオケ音源」の 2 つの動画があります。

オンボとオフボを別々の動画にしておくと、それぞれの動画に「映像+音声」がありますが、映像(字幕)はどちらも同じなのでディスク容量の無駄になります。1 つの動画に「映像+オンボ音声+オフボ音声」を同居させるマルチトラック動画にすれば、映像 1 つ分のディスク容量が節約できます。

例えば、映像のビットレートが 2 Mbps の 5 分間の動画の場合、75 MB の容量を節約できます。

また、マルチトラック動画にすると、再生中にオンボとオフボを切り替えられるのも大きなメリットです。

必要なツール

マルチトラック動画の作成に必要なツールは、Yamb と MP4Box の 2 つです。私たちは Yamb を使い、Yamb が MP4Box を使います。

Yamb はこちらのサイトから最新の zip 版(2023 年 5 月現在は Yamb-2.1.0.0_beta2.zip)またはインストーラー版をダウンロードします。PC の好きなフォルダーに zip を解凍しておきます。

MP4Box はこちらのサイトから GPAC の最新インストーラー(2023 年 5 月現在、64 ビット Windows 用は gpac-2.2.1-rev0-gb34e3851-release-2.2-x64.exe)をダウンロードします。exe を実行し、指示に従って GPAC をインストールすると、インストールしたフォルダーに MP4Box.exe が入ります。

GPAC のインストール先をデフォルトの Program Files 配下にするとうまくインストールできないようです。別の場所(例:C:\App)にインストールすると良いでしょう。

なお、Yamb のインストーラー版には MP4Box.exe が同梱されていますが、古いので使わないでください(例えば HEVC の処理ができません)。必ず GPAC の MP4Box.exe を使うようにします。

Yamb の設定

YambYamb が MP4Box を使えるように設定します。

Yamb を起動し、左側のアイコンから「Settings」をクリック、右側の「Advanced Settings~」をダブルクリックします。

Yamb2Advanced Settings 画面になるので、左側から「MP4Box」をクリックし、Location のフォルダーアイコンをクリックして、前章でインストールした GPAC に含まれている MP4Box.exe の場所を指定します。

指定を終えたら「Next」をクリックして設定完了です。

結合作業

マルチトラック動画を作るために、映像や音声を結合します。

Yamb3Yamb を起動し、左側のアイコンから「Editing」をクリック、右側の「Click to join~」をダブルクリックします。

「Concatenation of Files」の画面になるので、エクスプローラーからオンボ動画(映像+オンボ音声)または元の PV 動画(オンボ音声のもの)をドラッグ&ドロップします。

(補足)
PV 動画とオンボニコカラ動画の 2 つがある場合、可能であれば PV 動画を使う方が良いです。オンボニコカラ動画の音声部分は PV 動画の再エンコのため、音質が下がっていることが多いです。
その後、オフボ動画(映像+オフボ音声)もドラッグ&ドロップします。

Yamb4aドロップした動画のトラックが一覧表示されます。通常は上から順に、PV(オンボ)の映像、PV(オンボ)の音声、オフボの映像、オフボの音声、となります。

一番上、PV(オンボ)の映像は不要なので、チェックを外します。

Yamb5上から 2 番目、PV(オンボ)の音声トラックをクリックして選択してから、右側の「Properties」ボタンをクリックすると、音声トラックの情報を設定する Properties ウィンドウが開きます。

「Language」は必須ではありませんが、「Japanese」を選択すると良いでしょう。また、「Track Name」に「On Vocal」と入力します(日本語ではなく英語で入力するほうがトラブルが少ないです)。

Ok ボタンをクリックすると Concatenation of Files ウィンドウに戻ります。

Yamb6同じように、一番下、オフボの音声トラックをクリックしてから Properties ウィンドウを開きます。

オフボの場合は言語は関係ありませんから、「Language」はデフォルトのまま「Unspecified」で良いでしょう。「Track Name」に「Off Vocal」と入力して Ok します。

Concatenation of Files ウィンドウに戻ったら、「Output」に出力動画ファイル名を入力します(デフォルトではドロップした動画のファイル名になっていますので、変更しないと上書きされてしまいます)。

ファイル名は、オンボとオフボの両方が含まれることが分かるように付けると良いでしょう。

例)
楽曲名_歌手名(On-Off).mp4
千本桜_初音ミク(On-Off).mp4

Yamb7これまでの作業内容をまとめると右の図のようになります。

すべての入力を終えたら、「Next」ボタンをクリックします。マルチトラック動画が生成されます。

再生

【Windows Media Player での再生】

マルチトラック動画は、通常の動画と同じように Windows Media Player で再生できます。

音声を切り替えたい場合は、ウィンドウ右上にある「ライブラリに切り替え」ボタン(LibChange)をクリックします。

WMPMenu画面が切り替わり、メニューバーが表示されるので(メニューバーが非表示になっている場合は、ウィンドウタイトルバーの少し下を右クリックするとメニューが表示されます)、メニューから[再生→オーディオおよび言語トラック→再生したい音声トラック]をクリックすると音声が切り替わります。

【MPC-HC / MPC-BE での再生】

Windows Media Player で音声を切り替えるのは手順が多く面倒なので、MPC-HC または MPC-BE で動画を再生するほうが簡単です。

これらのプレーヤーの場合、動画再生中に「A」キーを押すことで音声を切り替えられます。

MPCMenuメニューから切り替える場合は、[再生→音声トラック→再生したい音声トラック]です。メニューに「On Vocal」など Yamb で設定したトラック名が表示されるので分かりやすいです。

おまけ


更新履歴

  • 2019/10/04 初版。
  • 2023/05/14 GPAC について追記。